「 のら猫物語 」  

             莉りと「チビ」

のら猫たちは決まった時間に現れ、近頃では 餌場に行くと すぐ足元まで寄って来るようになっていた。「モコモコもこちゃん」も威嚇をしなくなり「ニャオン」と挨拶も するようになっていた。「チビ」に関してはスリスリまでするようになっている。何度か抱こうとしたが、出来ないでいたが 仲良しになってはいた。

莉りは 彼らが大好きだ。近づかせた事は、一度もない。毎日の日課のように、朝になると 塀に乗り「ニャオン」と朝の挨拶に やって来る「ちゃあちゃん」と「チビ」。他の猫たちは、餌にやって来るがこの親子は、餌を貰いにやって来る。塀から必ず「ニャオン」と言い、自分の存在を教えているようだ。
莉りもまだ幼く、こちらも尾を360°振り大歓迎する。何度見ても、なんとも笑える光景だった。

ある日の大雨の日、いつものように雨宿りをしていたのら猫一家・・・。冬の初めだったが可愛そうに今日は震えていた。かなりの雨量で避ける場所は持っていたに違いないが 避けるタイミングを失ったのだろうと思い、暫く様子を見ていた・・・雨は、小降りになる気配もない・・・。私は、とうとう「チビ」を胸に抱き、我が家に連れ帰った。体を拭き、ワンミルクを与え、ピョンピョンとその間、歓迎会を 続ける莉りの前に「チビ」を降ろした。莉りは「ワンワン」と挨拶をした。興奮して いつもより音が高い、「逃げた」と思った。だが「チビ」は、少し後ろに 身を引いたものの・・・いた。
「大丈夫」と 私は頭を撫でた。莉りは、お尻を持ち上げ 遊びの誘いを している。すると、なんと!「チビ」は莉りに「スリスリ」をし、莉りは 耳に KISSをした。ビックリした!が、私は、感激にも 近い感情を、自分の中に感じ・・・暫く、固まってしまっていた。慌てて離したが、付かず離れず「莉り」と「チビ」はごく自然に、同じ空間に居た。

自分から ボ-ルを「チビ」の前に置き「ワン」と合図を 送り「遊ぼう」と誘う。「チビ」は猫パンチで答える。何度も運ぶ莉り、2度で飽いて、無視をする「チビ」。クッションで 横になり、体を舐めながら、眠ってしまった。私は 呆れながらも、初めての「猫との遭遇」に言葉を失っていた。
暫くして、「モコモコもこちゃん」が自ら、我が家にやって来た。網戸を 開けると「チビ」の傍に行き 「ニャオン」と声をかけ、こちらのことなど お構いなしに 眠った。「兄弟かな?」思わず呟いた。仲良しだ。
いまだかつてない出来事に、私は言葉を 失っていた。莉りは、「モコモコもこちゃん」に対しては 少し戸惑っていた。少し威嚇の「ワン」と言ったが、すぐに私が 抱き上げ 混乱は治まった。「チビ」を初めて抱けたのは、タオルと言う境界があったからだし、「モコモコもこちゃん」にしても、内心は悪さをしないか心配だった。ただ・・・彼らの寝顔は安心に満ちていた。すぐに寝息を立て始め、無邪気さの残る可愛い寝顔を見せていた。そして私は受け止める心を持てる自分に気づいていた。

この日から、二匹は 我が家の猫になった。かなりの時間 二匹は眠った。途中「ちゃあちゃん」が 見に来た。私は 窓を空け「おいで」と言ったが「ニャオン」と一言、こちらの様子を気にしていたので、「チビ寝てる」と伝えた。チビの寝ているクッションをちゃあちゃんに見せるようにずらし、ちゃあちゃんに見せた。彼女は不思議そうな顔をチラリと見せたが、すぐに塀の向こうに消えていった。二匹はぐっすりだ。夕方になり お腹がすいたのか二匹は どちらからともなく、「フヤン」と欠伸をし 背を伸ばし、目覚めた。まるでずっと我が家に居た猫のように、自然に・・・自然に彼らは居た。不思議な気持ちだった。
私は自分でも気づかないうちに、彼らと心を通わせて・・・いたのではないだろうか?・・・この自然さは何?そう考えながら その事実に気づいた。同じ時間を同じ空間で何度となく過ごした・・・私の近づこうとした意識を 彼らは受け止めたに違いないと確信した。莉りは、お昼寝の途中 何度ともなく猫たちを見ながら、尾を振り・・・そこに居る存在を確認しながら・・・安心してまた目を閉じていた・・・。何とも 穏やかな時間・・・。出逢いから今日まで、こんな日が来ようと思ってもいなかったし、想像もつかなかった。
莉りの猫好きは・・・本物だった・・・。(絶句・・・)

私は、二匹が 我が家から 出る前に 餌を与えた。虫下しを入れた きびなごだ。以前にも外で、皆に与えている。
虫下しは2回与えるように 獣医さんから伝え聞いていたので 丁度良い時期だったからだ。二匹とも食べた。「これで、大丈夫」次に「チビ」を抱き上げ、首にフロントラインを、つけた。もちろんタオルを「チビ」と私の間に挟んでである。嫌がったが 後を ブラシで整えた。「モコモコもこちゃん」の番だ、初めて触る彼女?の体は 柔らかな体毛に包まれ、強く抱きしめると 壊れそうな感じがした。「ン、ニャオン」と一言鳴いたが 上手くいった。ブラシを身体にしてやると、彼女は一瞬驚いていたが、すぐに気持ち良さそうに、こちらに身を任せていた。「ハー」と威嚇していた頃の「モコモコもこちゃん」と、今 目の前にいる彼女とは全く違う顔をしていた・・・。

私は ご褒美に 牛乳を温め、莉りと 二匹の猫に与えた。莉りは、隙有らば「ペロペロ」と猫たちを 舐めたい様子だったが「ダメ!」と戒めた。そうしていると「ニャン」「ちゃあちゃん」のお迎えだ。二匹を窓から出し、「ちゃあちゃん」にも牛乳を温めて与えた。フロントラインは 二匹の子猫にして措けば、親猫は 大丈夫だろうと思い、ちゃあちゃんにはしていない。彼女は 風邪気味だったが、もう良さそうにしていた。何事もなかった様に、猫の来客は帰って行った・・・。

莉りは、それからも 毎日来る 「ちゃあちゃん親子」に夢中の毎日を過ごしていた。実に仲良く、問題もなく、同じ時間を過ごしていたある日 莉りの「キャ〜イン」と言う叫び声!!何があったのか?・・・どうやら「チビ」が、身体に絡まって遊ぼうとしたようだ。猫は、お互いの身体を絡ませながら遊ぶ 莉りにはその行動が 理解出来てなかったようで、怖かったらしい。

そろそろお互いの違いを 理解させた方がいいと思った私は、猫たちには、餌は外で与えた。むやみには 家には入れないようにした。雨の日には 必ず来るようになった「チビ」。身体を拭き、必要以上に 莉りには近寄せなかったが、猫たちが来ても 莉りをハウスに 入れることも しなかった。互いに 判っているようで 莉りもいつもくつろぐ ソファに「チビ」が来ようとすると、莉りは「ワン」と威嚇したし、猫たちも身の程はわきまえていたようで、100円ショップで買った籠に入りくつろいでいた。
玄関にトイレを作り用意してみた、「チビ」も「モコモコもこちゃん」もきちんとその場所にしていた。「ちゃあちゃん」は、雨の日にしか入らなかったが 静かに籠の中で身体を舐め、静かに存在していた。相変わらず、莉りのスキスキ攻撃に対しては、威嚇をしていたが 莉りも滅多にしなくなっていた。ボール遊びをする莉りと我が子を見つめながら、安心するように静かに眠っていた。「いい猫だなあ」といつも感心していたし、賢そうな瞳の奥には 彼女の計り知れない人生を私は感じていた。

莉りの歓迎会が だいぶ落ち着き始め、互いの違いもわかり始め お互いの存在が当たり前のような空気になった頃、季節は冬に入っていた。私は外の籠に 毛布を敷き、回りをダンボ-ルで囲っていた。 雨の日に 必ず我が家に来ていたのは、いつもは違う場所で眠る「くろこ」と「ぶちこ」親子で 一杯になるからだろう。この親子は決して、私の傍には近づかず、餌を食べに来るだけだった。同じ様に接していたが、懐く、懐かないは その猫の性質の違いなのか?「くろこ」は、隣のお姉さんにしか、身体を触らせることはなかったし、「くろこ」の子供の「ぶちこ」もそうだった。

莉りは、「チビ」から、少し痛い思いをしてから後は、つかず離れずで、ボ-ルを運んで 猫パンチをしてもらっては 取りに行く遊びを楽しんでいた。二匹はもう6ヶ月?になり、莉りも はげパピ時代が終わり、だいぶ大人になっていた。
私は「そろそろだな」と 二匹の去勢を考えていた。本来ならもう少し前に施した方がいいのだろうが、やっと抱けるようになったのは、最近のことだったし・・・。最近では名前を呼ぶと姿を現わすようになっていたから、今の時期が適切だと思った。
莉りはと言うと、私が「チビ」や「モコモコもこちゃん」を抱くとヤキモチもやかずに まるで「私も私も」と 催促するように跳ね、喜んでいた。(~_~メ)何とも変わった犬である。







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